昨今では、世界的な気候変動や人口増加、ロシアのウクライナ侵攻による「食料の武器化」など、食料安全保障の強化が課題になっており、食料情勢の変化に伴うリスクの高まりや、地球環境問題への対応、海外の市場の拡大等、我が国の農業を取り巻く情勢が食料・農業・農村基本法が制定時には想定されなかったレベルで変化しています。更には、本年1月1日に発生した能登半島地震による大規模な農業施設の被害を始めとする農地や家畜被害など、改めて自然災害の猛威による生産基盤の弱体化が懸念されています。
そのような中で、本年は第30回JA北海道大会の実践3年度目となり、前年度以上に大会決議事項の基本目標であります「JA運営の好循環」の工夫を凝らした対話運動を実践や、組合員より頂いた意見や提案を新たな取り組みとして反映できるように進めなければなりません。又、人づくりとJA経営の強化として、対話運動に通じた協同組合運動の意義と本質を再確認する機会を作り、JA利用への系統結集力の向上に努め、学習や研修会の機会を整備しJA利用の強化・活性化の支援も取り組んで参ります。
鹿防護柵設置事業ついては、これまでも津別町と事業実施に向けた協議を進めて参りましたが、JAの運営状況等を鑑み多面的事業で鹿防護柵の保全強化として、既存施設の補強・延長を目的に寄与する内容で実施致します。尚、鹿防護柵設置事業は第11次の中期経営計画に向けた継続協議として取り進めて参ります。
通信不感地帯施設整備事業については、令和5年度は一部の地区でモデル事業として展開し、令和6年度は現状確認を始めとする施設整備や事業運営の整理、受益者協議会の設立など令和7年度事業実施に向けて計画的に取り進めて参ります。
今後5ヵ年の指針となる第10次農業振興計画は、重点施策を「農業所得の増大と持続可能な農業生産」「担い手の確保と次世代の多様な価値観に対応した経営」「食料・農業・環境に関する地域住民理解の醸成」と第9次から比べ3つに集約したより中身の濃い内容に設定し、「強い農業と豊かな魅力ある農村」を目指すことを基本目標としました。又、中期経営計画では令和5年度に補助事業の採択を頂き取り進めて来ました小麦乾燥調製施設の更新と新設スケール棟の運営、令和7年度には小麦コンバインの更新、令和8年度には玉葱定置タッパーの利用事業開始に伴う設備投資等などJA事業の好循環を目指す内容と致しました。しかしながら、この計画を取進める上で10数年間据置としてきました営農指導賦課金並びに各種利用事業の単価見直しをさせて頂きました。その為にも、JAとしては組合員の負託に応えるべく円滑な事業運営とコスト削減を図って参ります。
JA運営面では、早期警戒制度が適用される系統金融機関として、持続可能な収益性と将来にわたる健全性の事業運営が強化されました。昨年度より参事制と営農部を再創設し、組合員への総合的なサポートを図り専門性の業務体制として取り組んで参りましたが、引き続き内部統制の向上や職員人材育成、事業利益確保による事業分量の配当の実施等に向けた財務基盤確保と法令遵守態勢の取り組みを強化し、第10次中期経営計画に基づいた健全経営の確立を進めて参ります。
施設計画では、小麦調整施設増強工事等、総額1,282,754千円を計画致しました。既に小麦調整施設増強工事は3月に完成しており、7月からの万全な受入体制に向けた操業整備を取り進めておりますので、更なる系統結集に向けた小麦生産の取り組みにご理解をお願いします。
最後に、日本の農業をめぐっては、生産資材価格の高止まりが農業経営に大きな影響を及ぼす一方、生産コストの国産農畜産物への価格転嫁は進まず、生産現場は厳しい状況が続いております。
政府は、令和5年6月に「食料・農業・農村政策の新たな展開方向」を策定し、令和6年度の通常国会にて食料・農業・農村基本法の抜本的な見直しが決定されました。今後の農業情勢を左右する大きな転換期であり、持続可能な農業・農村の実現と食料安全保障の強化に向け、農業に関わる人全員が力強い農業政策の確立に向けて行動を共にする必要があると感じております。
以上、本計画に基づき環境変化に柔軟に対応しながら、協同組合の理念と精神を事業の拠り所とし、役職員一丸となり事業推進に取り組んで参りますので、組合員皆様のご理解とご協力を賜りますことをお願い申上げ、基本方針と致します。